仏滅の日に、部屋を片づけた話
その日は仏滅だった。カレンダーの隅に、小さく「仏滅」と書いてあるのを見て、なんとなく一日の期待値を下げた。大事な連絡は明日にしよう。新しいことは始めないでおこう。そうやって予定を間引いていったら、ぽっかりと午後が空いた。
それで、片づけをすることにした。仏滅は「物滅」――いったん滅んで、新しく始まる日、という解釈があるらしい。それなら今日は、手放す日にちょうどいい。
クローゼットの奥から、三年着ていないシャツが出てきた。いつか使うと思っていた紙袋の束。取扱説明書だけが残った、もう手元にない家電のファイル。ひとつずつ「ありがとう」と言って、袋に入れていく。声に出すと少し照れくさいが、不思議と手が止まらなくなる。
夕方には、部屋の角に四十五リットルの袋がふたつ並んだ。空いたクローゼットの隙間から、見慣れない壁が見えている。その白さが、妙に晴れやかだった。
暦は、行動を縛るためのものではなくて、行動にリズムをくれるものなのだと思う。大安に始めて、仏滅に手放す。吉日に種を蒔いて、不成就日に土を耕す。そう考えると、カレンダーの隅の小さな文字が、毎日にちょっとした演出をつけてくれる舞台監督のように見えてくる。
次の仏滅には、本棚を片づけようと思っている。滅した場所にしか、新しいものは入ってこないのだから。